| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-107 (Poster presentation)
イラガMonema flavescensは在来の蛾であり、まゆで越冬をする。まゆは固く頑丈で、白黒の縞模様から一様の茶褐色まで多様な斑紋変異がある。これまで、細枝には白黒縞模様のまゆが多く、幹にはそれ以外のまゆが多いとみなされてきた。本研究では、まゆの斑紋が、まゆの形成位置に応じて隠蔽的になっているかを検証した。野外における捕食圧は、滋賀県大キャンパス内の樹木に寄生しているまゆを採集し、まゆの斑紋を全面斑紋、一部斑紋、および無紋に分け、その形成場所やまゆの状態(死亡要因や羽化)とともに記録した。また、まゆの隠蔽度は仮想捕食実験により検証し、主要な捕食者であるシジュウカラの代わりにヒトをダミー捕食者とした。各斑紋につき6個のまゆをランダムに選び、アキニレの幹もしくは細枝に付着させ自然光下で撮影した。37人の被験者に対して、計36枚の写真をランダムな順序でモニター上に提示し、発見時間をもとに生存時間分析を行った。
その結果、野外では、一部斑紋・無紋のまゆが全面斑紋のまゆより多く形成されていた。そして、全面斑紋のまゆは細枝に多く、鳥による捕食も少なかった。仮想捕食実験では、細枝で全面斑紋が無紋・一部斑紋よりも隠蔽的だが、幹で一部斑紋が全面斑紋・無紋よりも隠蔽的だった。細枝と幹で比較すると、斑紋に関わらず、まゆは幹にある方が隠蔽的だった。これらのことから、まゆの斑紋型はそれぞれ頻度の高い場所で隠蔽的な傾向があることがわかった。しかし、鳥はまゆの隠蔽度の低い細枝ではなく、隠蔽度の高い幹を好んでまゆを採餌していた。おそらく、細枝は足場が悪く、固いまゆの処理(handling)に大きなコストがかかることや、細枝よりも幹でのまゆの数が圧倒的に多いため、幹を選好するものと考えられた。