| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-109 (Poster presentation)

下層植生衰退下におけるニホンジカの食性-DNAバーコーディングによる糞分析-

*中原文子,池川凜太郎,安藤温子,山崎理正,高柳敦,井鷺裕司(京大院・農)

近年、ニホンジカ(以下シカ)の個体数が急増し、過採食による下層植生の衰退が各地で顕在化している。京都大学芦生研究林(以下芦生)においても同様の問題が生じ、下層植生が消滅している。芦生のシカの食性を把握することは、下層植生がなくなった生態系へ及ぼす影響を知る上でも重要である。食性解析の手法としてDNAバーコーディングが注目されつつあるが、その信頼性についてシカでは検証されていない。そこで本研究では、給餌試験によりDNAバーコーディングの有用性を確認し、芦生におけるシカの食性解析を行った。

2013年8月、京都市動物園で保護されていた仔ジカに7日間5種の餌を与え、糞を採集した。採集した糞から抽出したDNAのtrnL P6 loop領域について、次世代シーケンサーを用いて塩基配列解読を行った。得られた配列は自作した22種のローカルデータベース(以下LD)及びNCBIのデータベース(以下ND)とそれぞれ照合し、植物種を同定した。2014年2~10月に芦生で糞を採集し、DNA抽出以降同様の実験を行った。得られた結果はNDと照合して植物種を同定した後、Between-Class Analysis (以下BCA)を行って食物構成を月間で比較した。

給餌試験の結果、餌植物のDNA配列を糞から検出できた。LDでは種レベルで識別でき、NDでは科レベルでほぼ餌植物と一致したが、どちらの場合でも餌植物と一致しない配列が1~2%程度得られた。芦生のシカの食性解析では、35サンプルから41科120属の配列が得られ、主に高木・低木を採食していることが明らかになった。また、BCAの結果から、2~3月、4~8月、9~10月の食物構成がそれぞれ大きく異なることが示唆された。


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