| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-112 (Poster presentation)
体密度が水より大きいチャネルキャットフィッシュは,尾鰭を振らずに潜降するグライディングと尾鰭を動かしての浮上を繰り返して移動し,潜降時に-15°,浮上時に60°の体軸角度をとることで移動コストを水平遊泳に比べ最大43%節約できると室内実験から予測されている(Beecham et al. 2013).野外での本種の遊泳行動を調べるため,2012-2014年に霞ヶ浦および矢作川でそれぞれ4個体と1個体に行動記録計を装着し,9-87時間の行動記録(深度・3軸加速度・遊泳速度)を得た.行動記録から5秒以上継続する潜降および浮上行動を抽出してその間の体軸角度と遊泳速度を求め,各潜降がグライディングを含むか否かを尾鰭振動の有無から判別した.
潜降時の体軸角度は霞ヶ浦,矢作川でそれぞれ-12.9±5.3°および-18.3±6.7°と両者とも-15°に近い値となったが,浮上時の体軸角度はそれぞれ24.7±7.1°ないし18.3±6.7°と理論的に予測された60°より有意に浅い角度となった.潜降時の遊泳速度は霞ヶ浦,矢作川でそれぞれ9.9±4.2cm/sおよび13.8cm/s±5.5cm/s,浮上時が13.2±4.5cm/sおよび16.0±5.9cm/sと,移動コストの最も低い遊泳速度38.92cm/s(潜降時),53.79cm/s(浮上時)に比べ有意に遅く,野外では理論の予測に比べ低速で泳ぎ,浮上時により浅い体軸角度をとることが示唆された.グライディングは潜降の後半でのみ見られ,この傾向は両水域で共通していた.水域で比較すると,川では湖より浅い角度で浮上,急角度で潜降し,グライディングの継続時間が短くなる傾向があった.こうした行動は流れの中で姿勢を維持するコストを抑える点で適応的と考えられる.