| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-113 (Poster presentation)
オオミズナギドリは、春から秋にかけて日本近海の島嶼で繁殖する海鳥である。胃内容物を採取した研究から、本種は主にイワシ類やイカ類などを補食することがわかっているが、深く潜水しない本種がどのようにして餌生物を捕獲しているのかは明らかになっていない。海洋高次捕食者である海鳥は、様々な栄養段階の海洋生態系変動の影響を受ける。また海洋表層の資源を幅広く消費するために、生態系へ及ぼす影響も大きい。そのため、本種の採餌生態を明らかにすることは、日本近海の特に表層の海洋生態系を理解する上で非常に重要である。
そこで本研究では2010年から2014年にかけて、育雛期のオオミズナギドリ成鳥の腹部に小型のビデオロガーを装着し、15個体から合計26時間の動画記録を得た。記録された280回の着水のうち、270回は採餌、10回は休息していた。この2つは、採餌行動の有無と、連続する着水間の飛翔時間の長さにより区別した。採餌方法は、水中の餌めがけて空中から飛び込むPlunge diveと, 着水した状態で水面をつついて餌を捕らえるSurface seizingの2種類に分類できた。Plunge diveは、カタクチイワシの群れや海表面に浮くイカを見つけたときに行われており、餌生物の真上に飛び込み、1回の飛び込みで1匹ずつ捕獲した。それに対してSurface seizingは、着水した後、数分間に何度も水中に頭部を入れて餌を探し、ついばんでいた。
本種が集団で着水している海面下には記録された134回中、27回でブリの群れが泳いでいた。また、ブリが小魚の群れを海面近くへ追い上げている様子も撮影されていた。以上より、オオミズナギドリは、大型魚に追い上げられた小魚を捕食するために、大型魚や、それを見つけて着水した同種他個体を目印として着水し、採餌していると考えられる。