| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-119 (Poster presentation)

訪花したハナアブのためらい行動に捕食者の存在が与える効果

*鈴木瑞穂・横井智之・渡辺 守(筑波大・生物)

ハナアブ類は訪花している時に捕食されるリスクを最小にするため、さまざまな対捕食者戦略を進化させている。ヒラタアブ属では花に着地する前に、前後方向に飛翔する「ためらい行動」を示すことが知られている。花の上に捕食者が存在すると、ためらい行動の回数は減少し、その花に着地せずに避けることがわかっている。このためらい行動が、着地後の捕食リスクを減少させるために行なうのだとすれば、花上の捕食者がほとんど存在しない生息地では、ヒラタアブ属はためらい行動を行なっていないと考えられる。そこで花上に捕食者が存在しない場所を利用しているヒラタアブ属のためらい行動を調べ、さらに、人工的に捕食者による攻撃を与えた場合、行動に変化がみられるのか野外実験を行なった。花上の捕食者が確認されていないヒメジョオン群落内に1 m×1 mのコドラートを設置し、ホソヒラタアブ、ミナミヒメヒラタアブ、ホソヒメヒラタアブの3種が訪れた花の数と、着地する前に行なったためらい行動の回数を調べた。その結果、コドラート内で訪れた花の数に種間で違いはなく、どの種もためらった回数は0回で着地する個体が多かった。次に群落内で最も個体数の多かったミナミヒメヒラタアブを対象に、花上で採餌している個体の腹部をピンセットでつまんで攻撃を与え、その攻撃の前後に訪れた花でためらった回数を比較した。その結果、攻撃を受けた個体は、その直後に接近した花を避ける傾向が見られた。ためらった回数には攻撃の前後で違いはみられず、着地する時はためらわない個体が多かった。以上の結果から、ヒラタアブ類は攻撃を受けた直後には、花へ接近しても着地せずに避けることで、捕食者と出会う確率を減らしていると考えられる。しかし、ためらう回数は花上の捕食者との出会いを経験することで変化していないため、ためらい行動は着地する花を別の観点から評価するための役割をもつ可能性がある。


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