| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-120 (Poster presentation)
【緒言】我々は、北海道内におけるトガリネズミ形目の最優占種オオアシトガリネズミの実験動物化を試みているが、同種は体重10g程度と小型で半地下性のため、飼育法開発の基礎となる生態学的な情報が乏しい。そこで、ラジオテレメトリーによる同種の行動圏調査を試みた。【方法】供試個体は、7月~9月に網走管内の森林で墜落缶を用いて捕獲した。捕獲した個体は、尾の被毛で前年生まれかどうかを判別し、体毛ゲノムによるPCRで性別を判定した(亀山ら 2014)。瞬間接着剤で発信器(ATS社、0.65g)を装着した個体は、捕獲後24時間以内に捕獲地で放獣した。行動の追跡は、同時2点測量で1時間毎に24時間行った。また、1時間毎の推定位置の間隔を移動距離とした。【結果・考察】当年の雄個体3体(体重9.9~10.7g)、越冬の雌個体1体(体重10.3g)の行動を調査したところ、最外郭法による行動圏はそれぞれ1030㎡、450㎡、670㎡、730㎡であった。今回得られた平均行動圏720㎡は、標識再捕獲法による既報の188.3㎡(大舘 1992)よりも広かった。また、すべての個体は長い休息を取らず、明期と暗期の両者で移動、すなわち活動していた。この傾向は、飼育個体における観察の結果と一致していた。以上より、オオアシトガリネズミのラジオテレメトリー調査に成功し、同種の行動圏が野球の内野と同等の広さであることが示された。