| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-121 (Poster presentation)

奈良公園におけるニホンジカのおじぎ行動―その特徴と文化的行動としての評価

*秋田桜子(奈良女子大院), 和田恵次(奈良女子大), 鳥居春己(奈良教育大)

奈良公園のニホンジカが鹿せんべいの供餌者に対して示すおじぎのような誇示行動(おじぎ行動)について、ヒトからの影響度が異なる地域や個体の性・体サイズ・姿勢と関連付けながら、おじぎの向きや回数を調べる供餌実験を行い、その特徴を明らかにした。また、奈良公園のようなヒトからシカへの餌付けの習慣が無い宮島の個体群と奈良公園の個体群との比較と、おじぎ行動が未学習の若齢個体による成体のおじぎの模倣実験により、奈良公園のニホンジカにみられるおじぎ行動の文化的行動としての評価を行った。

宮島の個体は奈良公園の個体に比べ、際立っておじぎが少なかった。奈良公園内では、ヒトの多い地域の方がヒトの少ない地域より多くおじぎをすることがみられた。これらの結果は、おじぎ行動が奈良公園でのヒトとの関わり合いを通して学習される行動であることを示唆する。個体の年齢間では、成体は一歳仔よりも、一歳仔は当歳仔よりもおじぎ回数が多く、成体は一歳仔に比べて縦方向のおじぎを行う個体の割合が高かった。これは、奈良公園のニホンジカが年齢に伴っておじぎ行動を発達させることを示す。個体の性や姿勢によるおじぎ行動の差異もまた明らかとなり、雌個体は雄個体よりも、立ち姿勢の個体は座り姿勢の個体よりもおじぎを多く行った。模倣実験では、若齢個体は、成体のおじぎ行動の観察後に観察前より多くのおじぎを行うようになった。これは、若齢個体が成体のおじぎを観察することにより、おじぎ行動を獲得していることを示す。


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