| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-123 (Poster presentation)
潜水性鳥類は潜水する前に蓄積した酸素量に応じて潜水時間を決め、有酸素潜水限界時間(ADL)を超えないように潜水を終了させると考えられている。一方、潜水性哺乳類の場合、餌に遭遇すると潜水時間を延ばし、時にはADLを超えて長時間潜水する種が多いといわれている。ADLを超えると、酸素負債により生じた乳酸を解消するために潜水後に長時間水面に滞在しなければならず、結果的に餌のいる深度に滞在できる時間割合を減らすことになる。それでも、餌の種類や分布状況によっては、ADLを超える潜水を行う方が良い場合が存在するようだ。爬虫類であるウミガメ類がどちらのやり方を採用しているのか、それを調べるために野外実験を行った。2007年から2014年にかけて、三陸沿岸域の定置網で混獲されたアカウミガメ9個体に動物搭載型ビデオカメラを装着し、岩手県大槌湾もしくは船越湾から放流した。動物搭載型カメラは数日後に個体から切り離され、洋上に浮上したものを船で回収した。
動画データより潜水前後の呼吸回数、水面滞在時間、平均呼吸間隔を抽出し、28回の潜水時間 (平均潜水時間: 22.1±17.8分)との関係を調べた。潜水前の各パラメータと潜水時間との間には有意な相関が見られたが(呼吸回数: 順位相関係数0.64, p<0.001, n=28、水面滞在時間: 順位相関係数0.68, p<0.001, n=28、平均呼吸間隔: 順位相関係数-0.48, p<0.05, n=25)、潜水後の各パラメータと潜水時間との間には有意な相関が見られなかった。また、採餌の有無によって潜水時間はあまり左右されなかった。以上のことより、アカウミガメは事前の酸素蓄積量に応じて潜水時間を決める鳥型のやり方を採用していることが示唆された。