| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-124 (Poster presentation)
海洋生態系の高次捕食者である海鳥の行動、餌、繁殖成績は、海洋環境の低次生態系の変化を反映していると考えられ、彼らの生態を調べることで、海洋環境をモニターする研究が行われている。新潟沖の日本海中部域は、対馬暖流の勢力によって夏から秋にかけての水温環境の年変動が大きいことで知られている。日本海中部域に位置する粟島(北緯38度27分,東経139度13分)には、オオミズナギドリ(Calonectris leucomelas)の中規模繁殖地があり、3月~11月にかけて繁殖が行われる。本研究では、オオミズナギドリを日本海域で採餌するモニター種として、ヒナに与える餌生物を長期にわたりモニターすることで、日本海の環境変化と海鳥の餌選択性について検証を行うことを目的とした。
2008年~2013年の8月~10月の間に、夜間、ヒナの給餌のため繁殖地に戻ってきた親鳥を捕獲し、胃洗浄法でサンプル(N=227)を取得した。その後、餌生物の筋肉より抽出したDNAをPCR法で増幅したDNA断片の塩基配列からBLAST検索を用いて種同定を行った。その結果、その構成に年変動はあるもののカタクチイワシ(Engraulis japonicus)を主に採餌しており(27.6%~58.1%)、マイワシ(Sardinops melanostictus)やマルソウダ(Auxis rochei)などの表層回遊魚も多く利用されていた。一方、ゲンゲ科(Zoarcidae)やタラ科(Gadidae)などの底生魚類も9.3%~34.1%の利用があることから、漁船の投棄魚を利用している可能性も示唆された。これらの結果をもとにオオミズナギドリの餌生物と海洋環境との関係について考察を行う。