| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-127 (Poster presentation)
広島県ではイノシシによる農作物被害額が全体の80%を占めている。特に被害の甚大な呉市では主に箱ワナによる捕獲に努めている。本発表者らのセンサーカメラによる調査では、箱ワナには寄せ餌を求めて様々な動物が侵入するが、イノシシの捕獲率が非常に低い。その原因として、シカやタヌキの箱ワナ付近への出没がイノシシの捕獲率に影響していると推察された。そこで本研究は、イノシシの捕獲率が特に低い箱ワナにセンサーカメラを設置して、箱ワナとその周辺における各動物種の出没状況を観察することで、イノシシの捕獲阻害要因について明らかにすることを目的とした。
呉市安浦町に設置した箱ワナにカメラを設置し、2013年9月〜2014年8月まで調査した。
撮影された写真から、箱ワナ周辺への出没頻度は、シカが最も多く、次いでタヌキ、イノシシの順で、出没時間帯は動物種で異なり、シカは寄せ餌が補充されると昼夜問わず出没したが、イノシシはシカの出没後、夜間に出没していた。シカが無警戒に箱ワナに体全体を入れて採食していたのに対し、イノシシの成獣はほとんど箱ワナ内に侵入しなかった。また、写真には、イノシシが遠くから採食中のシカを観察している様子やシカが立ち去った直後にイノシシが出現する場面が記録されていたことから、イノシシはシカの行動に影響を受けていることが示唆された。また、タヌキなどの小動物が箱ワナを作動させて扉を閉め、その後柵の隙間から逃亡する様子も観察された。
以上の結果から、従来の箱ワナと寄せ餌では、目的とした動物だけを捕獲することが難しく、イノシシがシカやタヌキと混在して棲息している地域ではイノシシの捕獲率が低くなると考えられた。そこで捕獲率を向上させるためには、各動物に応じた寄せ餌の種類を検討することや、特定の動物が侵入しても作動しない箱ワナに改良することなどが重要であると考えられた。