| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-171 (Poster presentation)
高山では、気候環境が厳しく人間活動が限られていることにより外来植物の侵入は少ないように見える。しかし、世界中の様々な地域で高山への外来植物の侵入が報告されている。富士山は標高の高い独立峰であり、高標高への外来植物の人為的な導入経路は麓から森林限界まで続く道路だけである。本研究の目的は、「富士スバルライン」の路傍植生において、(1)全出現植物種数に対する外来植物の種数の割合は標高に伴って減少するか(2)外来植物の出現頻度も標高とともに減少するか(3)高標高に侵入する外来植物の生活型や種子散布型は低標高のそれと異なるかの3つの問いに答えることである。
野外調査は標高857 mから2,305 mまでの「富士スバルライン」路傍で行った。0.5~1 kmの間隔で50 cm×5 mのトランセクトを55か所設置し、さらにトランセクト内を40個の小コドラートに区切って小コドラート内の維管束植物を記録した。出現した外来種の種数は標高に伴い減少したが、全種数に対する外来種の割合は標高と有意な相関を示さなかった。外来種の割合はトランセクトによって変動が大きく、路傍の周囲の環境に影響されていることを示唆する。標高に伴う出現パターンは、外来種間で違いが見られ、特にシロツメクサ、セイヨウタンポポ、ナガハグサ、セイヨウノコギリソウは高標高に高い頻度で出現した。高標高では他種との競争がなく、これらの外来種は耐寒性があるため、出現頻度が高くなったと考えられる。高標高に出現する種の生活型、種子散布型は在来種・外来種ともに多年草、風・重力散布型が多かった。しかし、動物散布型でも種子散布されやすい環境にも関わらず、高標高では動物散布型はほとんど出現しなかったため、生活型や耐寒性が高標高への外来種の侵入を制限していると考えられる。