| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-175 (Poster presentation)
里山は薪炭や木材といった生態系サービスを供給する場として利用されてきた。しかし、薪炭林や人工林の管理放棄が進むとともに、生物多様性が減少し、森林が持つ生態系サービスが劣化したといわれている。本研究では、陰樹と陽樹のサイズ分布を考慮することで、生物多様性の新しい指標を導入した環境価値、および陰樹、陽樹のそれぞれの価格を考慮した経済的価値の観点から数理モデルを分析し、最適な里山の管理方法を考える。
この数理モデルでは、陰樹、陽樹それぞれの高木、幼木を変数とする時間変化の微分方程式を用いた。陽樹の幼木に対する陰樹、陽樹の高木の被陰効果を考慮すると、このモデルから6つの平衡点の組み合わせが得られた。そのうち4つが非負の平衡点であった。また、安定性解析を行った結果、それぞれの平衡点は局所的に安定であることがわかった。
本講演では、陰樹、陽樹の高木、低木それぞれが里山に共存している平衡点を用いて、里山を利用する二つの立場から里山の管理を考えた。一つは環境価値(Fecol)を重視する里山に住む人々、もう一つは経済的価値(Fecon)を重視する林業的利用を行う人々である。まず、最初に、両者の和(Ftotal )を最大にするような伐採率のダイナミクスについて解析を行った。その結果、伐採率のダイナミクスの平衡点が満たすべき条件が求められた。そして、Ftotal が極大値をとるとき、伐採率の平衡点は安定性を持つことがわかった。二番目に、双方がそれぞれの価値を最大にするような伐採率のゲームダイナミクスについて解析を行い、数値計算によりナッシュ解を求めた。これについて、解析した結果を報告する。