| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-176 (Poster presentation)
近年、日本各地の湖沼で浮葉植物のヒシが大規模に繁茂している。ヒシの繁茂は、溶存酸素量(DO)の低下、沈水植物や魚類の減少を引き起こす一方、ユスリカ幼虫や貧毛類等に生息場所や餌を提供する。また、船の航行や漁業等の人間活動に障害となり、富栄養である福井県三方湖においてもヒシの刈り取りが行われているが、湖沼生態系への影響を考慮した刈り取りが望まれている。そこで、ヒシの刈り取りデザインの検討に資する科学的情報を提供するため、ヒシ帯とその周辺において詳細な空間スケールでの水質および水生生物を評価した。
2013年夏の調査では開放水域の大小による違いに注目し、開放水域が狭く閉鎖的なA区域と開放水域が広く開放的なB区域の2箇所でトランセクト調査を行った。トランセクトは開放水面とヒシ帯をまたぐように、両区域で2本ずつ設けた。2014年夏の調査ではヒシ被度の大小による違いに注目し、ヒシ被度が100%の領域(ヒシ被度大)と28~47%の領域(ヒシ被度小)が含まれるC区域で調査した。トランセクトはヒシ被度大と小の領域をまたぐように3本設けた。トランセクト内に設けた複数の観測地点において、水質、動物プランクトン、表層生物(ヒシやその周辺の水面表層にいる生物)、ベントスを調査した。
クロロフィル濃度とDOはヒシ帯より開放水面で高く、また開放水域が大きいB区域で高かった。DOはヒシ被度小の領域で高かったが、クロロフィル濃度はヒシ被度の大小では違いが見られなかった。多くの動物プランクトンや表層生物は、開放水面よりヒシ帯側に、またヒシ被度小より大側に多く存在していた。これらの結果は、刈り取りデザインによって水質や水生生物への影響が異なる可能性を示唆している。