| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-178 (Poster presentation)
近年、森林はCO2吸収源として期待されている。「間伐等の施業を行うことでCO2吸収量が増加する」と言われており、先行研究によって間伐林における炭素吸収量の増加や、伐採木と生立木を合算したバイオマス量の増加が報告されている。しかし、CO2吸収源としての働きは、バイオマス・土壌を含めた森林全体及び木材中にどれだけ炭素が蓄積されているかという総炭素蓄積量(以下「蓄積量」という。)によって考えられるべきであり、この点に関しての研究は未だ十分になされていない。
そこで本研究では、間伐によって蓄積量は増加するのか、また木材利用で蓄積量は増加するのかを明らかにするため、森林動態・土壌炭素動態・木材の滞留時間まで含む総合的なモデルを用いてシミュレーション研究を行った。具体的には切捨間伐を行う場合と皆伐を行い木材は建築材として長期利用をする場合という二通りのシナリオを想定し、それぞれの場合の蓄積量の変化について将来予測を行った。
研究の結果、間伐林における蓄積量は無間伐林と比較して、100年程度の期間では減少するが、150年程度の期間でみれば増加する可能性があることが示された。また、伐った木材を建築材として長期的に利用すれば、数百年オーダーで皆伐施業を行い続けることで蓄積量が増加することが示された。
これらのことから、間伐によって蓄積量を増加させることができる可能性はあるが、「間伐をすればよい」とも単純には言えないということが明らかになった。また、木材として長期利用をすれば、長期に渡る定期的な皆伐によって蓄積量が増加することが明らかになった。