| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-184 (Poster presentation)

気候変動下における人工林の最適配置へ向けた風倒リスク評価モデルの構築

*中川考介(北大・農),森本 淳子(北大・農),三島 啓雄(国環研・生物),小川 健太(酪農大・環境共生),竹見 哲也(京大・防災研)

台風よる風倒撹乱は、本来森林生態系における重要なプロセスの1つである。しかし、戦後の拡大造林政策に由来する人工林面積の増大やそれらの管理不足は森林のレジリエンスを低下させ、気候変動に伴う台風の強大化に伴い「災害」と呼ぶべき大規模な風倒被害を招くことが懸念されている。森林資源の損失を最小限に留めるには、気象変動に適応した人工林の再配置をすることが喫緊の課題である。したがって、風倒地の発生を正確に分析・予測できる高精度かつ実践的な風倒リスク評価モデルの構築が不可欠である。

本発表では、特に高解像度気象データの組み込みがモデルの説明力へ与える影響を検討した。同一の台風により風倒被害が発生した北海道内の4箇所の人工林と1箇所を対象に、まず林分要因(林齢・形状比・本数密度・広葉樹本数密度)、地形要因(標高・傾斜角・Topographic Position Index、露出度)を用いたロジスティクス回帰モデルを人工林・天然林それぞれにおいて構築し、AICによるモデル選択からベストモデルを決定した。次に、これらのデータセットに新たに高解像度気象モデルにより予測された気象要因(台風時の最大風速・強風の積算時間・最頻風速)を追加し、同様にモデルの構築と選択を行った。

疑似決定係数Pseudo R2を用いたモデルの説明力の検証の結果、人工林モデル・天然林モデルの両モデルにおいて、気象データの組み込みによる説明力の向上が確認された。一方で、気象データを組み込んだモデルにおいても、十分な説明力をもたないことが明らかになった。今後は、機械学習法によるモデル構築を試み、より確度の高い風倒リスク評価スキームを開発する予定である。


日本生態学会