| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-189 (Poster presentation)
近年、タイワンリスが日本の複数の地域で分布を拡大し、樹木剥皮の被害が問題となりはじめている。しかし日本では、リス類による樹木剥皮被害についての研究例は少ない。そこで本研究では、タイワンリスの被害が問題となっている緑地に生育する樹木について、剥皮被害の生じる要因および樹木の管理・保護策について考察することを目的とした。
調査対象地は「横浜自然観察の森」とし、6つの植生区において、24ヵ所の調査区を設置した。
初めに、樹木剥皮調査を行った。調査区は半径5mの円形で、そこに生育する胸高直径5cm以上のすべての樹木の樹種と胸高直径を記録した。加えて、樹木1本につき、枝幹の直径10cm未満、10cm以上20cm未満、20cm以上30cm未満、30cm以上の4部位別に、剥皮の程度を0~3の4段階で目視にて判定した。また、剥皮の程度を総合的に表すため、4部位それぞれの剥皮の程度の加算値を、大、中、小、剥皮無しの4つに分類し、総合剥皮度とした。
次に、樹皮の物理特性調査を行った。5樹種について、それぞれの出現樹木内において胸高直径が平均的な大きさである樹木を3本ずつ選び、引っ張り強度、突入強度、および樹皮厚を測定した。
さらに、タイワンリスの個体数調査を行った。ルートセンサス法を用いた調査を5日間、計20回行った。時速1~2kmで2時間ほどのコースを1日4回歩き、個体を発見した場合、地図にプロットし、時刻と個体数を記録した。
結果、タイワンリスによる樹木剥皮の程度は、植生区、樹種、胸高直径や枝幹の太さにより差があることが分かった。樹皮の物理特性については、剥皮されやすい樹種とされない樹種との間で、差が見られたものと、見られなかったものがあった。また、剥皮されない樹種が多い植生区にはタイワンリスは確認されず、被害もほぼなかったことから、剥皮の程度はタイワンリスの生息地の植生を反映するものと考えられた。