| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-195 (Poster presentation)

自然回復緑化における群落再生の評価方法

*堀田佳那,隅田皐月,石井弘明,黒田慶子(神戸大院・農)

自然回復緑化は,都市開発等により失われた天然林の復元を目的として行われる緑化であるが,まだその歴史は浅く,様々な手法が乱立している.また,緑化目標の達成度は,植栽木の生存率や植被率で評価されることが多く,緑化地において天然林がどれだけ復元できているかを定量的に評価する指標はまだない.本研究では,周辺の天然生二次林との生態的連続性を目的として10年前に植栽された神戸市の緑化地において,緑化目標の達成度を生態学的な観点から評価した.調査区は緑化地および隣接する二次林,植栽前に毎木調査が行われた二次林(目標林)に設けた.

全調査区の植生データをもとに,Bray-Curtis指数を用い植生類似度を求めた.その際,群落構造を評価するため,個体数と胸高断面積(BA)合計の両方を用いた.その結果,いずれのデータを基にしても,現時点の緑化地は二次林および目標林の植生との類似度が低いことが示された.また二次林内に設けた全プロットを比較すると,個体数よりもBA合計に基づいた類似度のほうが低く,群落構造を復元することは,種組成を復元するよりも難しいことが示唆された.一方で緑化地と二次林間の比較では,個体数よりもBA合計に基づいた類似度の方が高かった.これは緑化地内には一定の範囲内に多様な種が植栽されたこと,また二次林との共通種である高木種の胸高断面積が大きいことが要因であると考えた.さらに,目標の達成度を視覚化するため,非計量多次元尺度構成法(nMDS)による解析を行った.その結果,現時点では緑化地植生と二次林植生の間には隔たりがあることが確認できた.また種組成の経年変化も可視化でき,変化の方向が把握できた.この方法を用いて,さらに構造の経年変化を可視化すれば,遷移の方向を確認でき,緑化地における順応的管理に役立てることできる.


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