| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-122 (Poster presentation)
戦後、我が国の農地はその姿を大きく変えてきた。すなわち、1950年代から圃場整備が普及してきたが、1980年代からは耕作放棄地が増加し続けている。こうした農地の変化は、生物多様性に大きな影響を与えていると考えられる。しかしこれまで、圃場整備と耕作放棄に対する生物群集の応答の違いを明らかにした研究は少ない。そこで本研究は、鳥類5グループ(水田性・畑地性・草地性・林縁性・森林性)の種数・個体数に圃場整備と耕作放棄が与える影響を調べた。利根川流域内に28か所の100haグリッドをランダムに配置した。2007年の夏と冬、各グリッドで4地点のポイントセンサスを行い、得られた鳥類データはグリッドごとに集計した。目的変数として各グループの種数・個体数、説明変数として土地利用面積率(耕作放棄地・水田・草地・森林)および圃場整備率を用いた一般化線形モデルを作成し、モデル平均化係数とその信頼区間を算出した。その結果、圃場整備と耕作放棄の異なる影響が示された。まず圃場整備率は、夏の水田性鳥類の種数・個体数とは強い負の相関がみられたが、冬の畑地性鳥類の個体数とは弱い正の相関がみられた。一方、耕作放棄率は夏の水田性鳥類および夏・冬の林縁性鳥類と負の相関がみられたが、夏・冬の草地性鳥類とは正の相関がみられた。これらの結果は、特にサギやシギチドリなどの水田性鳥類が圃場整備と耕作放棄の両方によって脅かされている現状を示唆している。