| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-124 (Poster presentation)
ウトナイ湖は日本野鳥の会が国内最初のサンクチュアリに指定し、ネイチャーセンターの開館日に観察された鳥類が毎日記録されている。そこでこの観察記録を用いて1982年から2002年までのアカモズ、コヨシキリ、ホオアカ、シマアオジの4種の生息動向について分析した。アカモズは1985年まで観察頻度が比較的高かったが、1986年から急激に減少し、1987年以後はほとんど観察されなくなった。シマアオジは1997年までは30~60%で推移していたが、1998年に観察頻度は急激に下がり、2000年には最小になったが、0%にはならなかった。一方、コヨシキリとホオアカは年による観察頻度の変化はあるものの、著しい減少傾向はうかがえなかった。ウトナイ湖北岸では、1977年にラインセンサスが行われているので、2002-2003年に同様の方法で調査を行い比較したところ、アカモズは消失、シマアオジは減少していたが、コヨシキリとホオアカは顕著な減少傾向はみられなかった。また北海道野鳥愛護会が1971年から2014年までウトナイ湖北岸(植苗地区)で実施した探鳥会の記録を調べたところ、アカモズは1985年ごろからほとんど観察されなくなり、シマアオジは2002年から見られなくなった。またホオアカは2001年以降観察されないことが時々あったが、コヨシキリは毎年観察された。ネイチャーセンターの記録、ラインセンサス、探鳥会の各結果を比較したところ、アカモズが1985年ごろに減少したことについては、すべてで一致しており、このほかの種については多少の違いはあったが、ほぼ一致した傾向がみられた。長野県野辺山では、アカモズは1998年から減少したことが報告されているが(Imanishi 2002)、ウトナイ湖ではこれより12年も早く減少していた。今回の調査では、減少の原因は明らかにできなかったが、野辺山とは異なることが背景にある可能性が示唆された。