| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-127 (Poster presentation)

繁殖集団をつくる生物の保全生態学的研究 ー サンゴ礁魚類のナミハタを例として ー

*名波敦(西海区水研・亜熱帯セ),太田格(沖縄県水産海洋技術セ),佐藤琢(西海区水研・亜熱帯セ),河端雄毅(長崎大・水産),秋田雄一(沖縄県水産海洋技術セ)

[はじめに]繁殖集団をつくる動物の中には、集団形成中に捕獲され利用されるために、個体群の減少が懸念される種がある。さらに、移動経路の消失や非産卵期の生息場所減少などによる繁殖集団の規模の縮小も懸念される。従って、適切な資源利用方法を提案するには、①資源利用が繁殖集団に与える影響、②繁殖集団の形成に関わる個体の非繁殖期における分布、③非産卵期における生息場所選択を明らかにする必要がある。本研究では、サンゴ礁域で繁殖集団をつくるハタ科魚類のナミハタをモデルとして、本種の繁殖集団形成に関する知見を紹介し、今後の保全策について検討する。

[方法]①産卵場内の保護区設定の効果:繁殖集団の密度と性比の変化を調べ、保護区設定前後の密度を比較した。②繁殖に参加する個体の分布と行動特性:非産卵期に産卵場周辺海域で標識放流を実施し、移動距離を推定した。非産卵期に超音波発信器を装着し、繁殖集団を形成する直前の行動特性を調べた。③ハビタット選択性:潜水目視調査により、非繁殖期におけるナミハタの基質選択性を発達段階毎(幼魚と成魚)に調べた。

[結果]①保護区設定後、産卵場内の密度は2.7倍から10倍に増加した。②産卵移動距離は平均5.2kmであり、産卵場での滞在期間はオスが長かった。産卵場へ移動したすべての個体は産卵後に元の生息場所に戻った。③非産卵期には、幼魚と成魚はそれぞれ異なる基質を利用していた。

[考察]産卵場保護は、繁殖期間中、半径数kmの海域の集団を保護する効果があると考えられた。ただし、オスの産卵場滞在期間に合わせた保護期間の設定や、来遊ルートと非産卵期の生息場所の保全も必要であろう。


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