| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-131 (Poster presentation)

絶滅危惧種オガサワラグワの野生復帰

*生方正俊,大谷雅人(森林総研林育セ),藤田富二(関東森林管理局),安井隆弥(小笠原野生研)

小笠原諸島のみに天然分布するオガサワラグワ(Morus boninensis)は、近年成木の枯損が一段と進んでいることに加え、近縁種のシマグワ(M. australis)が過去に導入され逸出した母島と父島では、両種間で種間交雑が進み純粋なオガサワラグワの種子が得にくい状況となっていることが指摘されている。森林総合研究所林木育種センターでは、2004年から現地に生育するオガサワラグワ成木の冬芽から培養したクローンを緊急避難的に生息域外保存しており、オガサワラグワの生息域内への野生復帰の有効な手法を確立するため、父島においてこれらのクローン個体を用いた植栽試験を関東森林管理局と連携して実施している。野生復帰に当たっては、「小笠原諸島の生態系の保全・管理の方法として「植栽」を計画するにあたっての考え方(平成23年8月:小笠原諸島世界自然遺産地域科学委員会)」に基づき、植栽(野生復帰)に伴い予想されるリスクを最小限にとどめるため、以下の点に配慮して実施した。①植栽に用いるクローンは、父島固有の遺伝的組成を持つ個体のみとする、②原生の植生に与える影響を最小限にとどめるため、外来種駆除跡地等に植栽する、③植栽後の管理を確実に行うため、数カ所にまとめて植栽する、④非意図的随伴生物の侵入を防ぐため、無菌で培養されたクローン苗を無菌状態で父島に輸送し、父島で馴化させる、⑤植栽や管理は必要最少頻度・人数で、父島の植生を熟知したものの指導のもと、踏圧等による周辺植生への影響が最小限となるように行う、等である。さらに小笠原諸島の森林生態系の保全に関する委員会の会議等で野生復帰試験の計画案を議題として提出し、専門家等の承認を受けてから本試験を行っている。今回の発表で様々な種の保全や野生復帰に関わっている方々と意見交換することにより、より良い野生復帰の手法を確立したいと考えている。


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