| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-132 (Poster presentation)
半自然草原は多様な生物の生息地として注目を浴びているが、近年その面積の減少によって多くの草原性動植物が絶滅の危機に瀕している。こうした草原面積の時間的変化が草原性絶滅危惧種の生息に与える影響の解明は保全策の策定に必要不可欠であるものの、同一の生息地において草原面積と草原性絶滅危惧種の遺伝的多様性の時間的変化を実証した研究例は非常に少ない。本研究では環境省レッドリスト (2012) で絶滅危惧IB類に指定されているコヒョウモンモドキ (タテハチョウ科) を対象に、標本及び現存サンプルを用いて1980-2002年 (以下、過去) と2014年 (以下、現在) における遺伝的多様性を算出し、草原面積の減少が遺伝的多様性に与える影響を評価した。
本種の現存する3集団のうち過去および現在のサンプルについて、また絶滅した2集団のうち過去のみのサンプルについて、新たに開発したマイクロサテライトマーカー9座を用いて遺伝的多様性を評価した。さらに、地理情報システム及び航空写真を用いて、サンプルが得られた当時の草原面積を計算した。
その結果、各集団は現在と比べ過去は草原面積が広く、高い遺伝的多様性を保持していたが、草原面積の減少とともに集団内の遺伝的多様性が減少傾向にあり、絶滅してしまった集団もあることが明らかとなった。このことから、コヒョウモンモドキ集団が維持されるには広い草原面積の維持が非常に重要であることが示唆された。