| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-133 (Poster presentation)

絶滅危惧植物アイナエ(マチン科)の生育環境と発芽特性

岡崎 純子(大阪教育大・理科教育),小原 昌之*(大阪教育大院・理科),植松 千代子(大阪市立大院・理)

絶滅危惧種の個体群を保全・再生するためには、対象種の生活史特性、そして生活史の各段階における個体群変動を明らかにしていく必要がある(eg. 大谷 et al., 2009)。さらに植物個体群は、種子による供給により維持されており、鷲谷(2010)は種子の発芽・実生の定着特性は個体群の維持に重要な役割を果たし、種ごとに種子の休眠・発芽特性が明らかにされる必要があるとしている。材料としたアイナエ(Mitrasacme pygmaea)はマチン科の小型1年生草本で26都府県で保護を要する植物とされている。近畿レッドデータブック(2001)では絶滅危惧Cランク、大阪府レッドデータブック(2014)で絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)に指定されている。

そこで本研究では絶滅危惧植物アイナエの個体群保全を目指し近畿自生6集団で次の調査を行った。(1)生育環境の評価。これに関して個体群変動、個体サイズ、光条件、土壌水分含量の調査を行った。(2)種子発芽特性の解明。これに関して段階温度法(Washitani 1987 ; 鷲谷 1997)を用い、明暗交代条件と暗条件による発芽実験を行った。

その結果、(1)5月下旬から野外での実生が出現し8月上旬から開花結実を開始した。出現頻度と光条件に関連が認められ、個体の出現地は非出現地より土壌水分含量が多いことが分かった。(2)段階温度法における温度上昇系(IT系)明暗交代条件で多くの発芽が確認でき、5地点平均約17%、最大39.47%の発芽率を得た。最適発芽温度は30℃前後であると分かった。他の条件であるIT系暗条件、温度下降系(DT系)で発芽率は1〜3%と非常に低く、光発芽種子であることが分かった。これらのことから、アイナエ個体群の維持には十分な光環境と温度条件が重要であると考えられる。


日本生態学会