| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-136 (Poster presentation)
はじめに:気候変動が人間社会に与える影響が注目されているが、植物の分布変化については、南方系種の分布北上など、断片的な報告は見られるが、明確な分布変化のモニタリング事例は少ない。そこで、本研究では、種子植物に比べて、気候要因が、直接的に分布に影響しやすいシダ類(特に市街地に生育するシダ類)を対象に、種組成を把握して、気候との関連を調査し、気候変動指標に用いるための研究を行った。
調査地域:九州地方全域の市街地49箇所を調査区とした。
調査方法:道路沿いを歩き、道路脇に見られるシダ類群落(各50~59箇所)に含まれるシダ類の種名をリストアップした。調査区ごとに、生育していた各種の出現回数を集計し、相対優占度(=出現回数/調査群落数)と見なした。
調査年月:2010年7月~2013年11月
気象データ:国土数値情報の「平年値メッシュデータ」を使用
結果及び考察:49調査区で59種のシダ類が確認された。TWINSPAN,Indicator Species Analysisによって、シダ類群集はA~Eの5タイプに類型化された。即ち、グループA(指標種リュウキュウイノモトソウほか)、グループB(カニクサほか)、グループC(イヌケホシダほか)、グループD(サトメシダほか)、グループE(イヌワラビほか)である。CCAによる座標付け分析では、第1軸は吉良の暖かさの指数との相関が強く、第2軸は、吉良の乾湿係数との相関が強かった。群集タイプA~Eを目的変数とし、気候変数を説明変数とした分類木(JMP11.0による対話的パーティショニング)を行ったところ、ROC曲線(受信者動作特性曲線)とAUC(ROC曲線下面積)による分析で、精度の高い分類を行うことができた。分類木の分岐に際しては、暖かさの指数、冬季降水量、年最低気温が選択された。