| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-137 (Poster presentation)
農地整備や人口減少による耕作放棄地の拡大は農地に生息する生物種に影響を与えることが知られている。この影響は、生物種の在不在や生息密度と、農地整備度合や周囲の景観との関係により評価されてきた。しかし、高次捕食者の在不在や密度は、餌資源量による制限も受けているはずであり、景観と餌資源の相対的な重要性を評価する必要がある。そこで本研究では、繁殖期に餌資源としてカエル類に依存するサシバを対象に、サシバの在不在に対する景観要因と餌資源量の相対的重要度を、カエル個体数密度モデルを階層的に組み込んだパス解析により明らかにした。
調査は千葉県北部の谷津65か所を対象に行った。2013と2014年、サシバが営巣し(4下旬)雛が巣立つまで(7月初旬)に4から6回、サシバの定点観察と、その餌であるニホンアマガエル(以下、アマ)とトウキョウダルマガエル(以下、ダルマ)の個体数センサス調査を行った。サシバの在確率は調査回ごとの発見確率を考慮したsite occupancy modelで推定し、在確率を説明する要因として2つの景観要素(水田に接する林縁長、市街地面積)と餌資源量(アマ、ダルマ個体数密度)を組み込んだ。アマとダルマの密度は、それぞれの出現が最大化する調査日を明らかにした後、発見確率を考慮したN-mixture modelを用いて、アマは発見個体数期待値を平均とするポアソン分布、ダルマはゼロ過剰ポアソン分布に従うと仮定し推定した。カエル密度を説明変数として、コンクリート水路密度、水田面積、放棄田面積、水田に接する林縁長を入れた。ベイズ推定した結果、サシバには林縁長よりもダルマ個体数密度が正の影響を与えることが明らかになった。ダルマ密度にはコンクリート水路密度と放棄田が負に、アマには林縁長が正、コンクリート水路が負に影響を与えていた。