| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-139 (Poster presentation)
東お多福山には戦後初期までは年1回の刈り取りが行われるススキ草原が広がっていたが、1940年代以降は採草が途絶え遷移が進行し、草原面積の縮小(82.9ha→9.2ha)やススキからネザサへの優占種の変化などが起こって、近年ではススキ優占植分がほとんど見られない。そのため2007年より市民団体がススキ草原の再生を目的に保全活動を始め、2014年までに約1haの刈り取りが行われている。
保全にあたっては再生すべき目標植生の設定が必要であり、そのためには保全地の来歴や過去の植生情報を参照することが有用である。本調査地では、山火事の発生件数・規模、ネザサ一斉開花の記録、植生資料、標本、航空写真(3年代)による面積の変遷等の文献情報がある(矢野・阪口 1987、山戸・服部 2000など)ものの、情報の年代は限られており詳細な経時変化が把握できない、草原内のより詳細な位置での情報が得られない、当時の草原景観や植生相観、植生構造が把握できないなどの課題がある。
そこで本研究では、明治以降に撮影された古写真を収集し、植生景観、優占種や階層構造などの植生構造、人々の草原利用の形態について読み取り、東お多福山の今後の保全と利用のあり方を考察した。
2013年に調査した結果、446点の古写真が得られた。最も古い写真は明治末期~大正末期に撮影されたもので、収集点数は1980年代のものが最も多く172点であった。古写真からは、草原内の詳細な撮影位置、植生構造(ススキやネザサの被度、概ねの草丈、両種の被度・草丈の相対関係)、草原内でのススキ優占植分・ネザサ優占植分の広がり、眺望の経時変化などが判読出来たほか、植林管理に伴い刈り取りが行われていたこと、ハイキング以外の様々なリクリエーション利用がなされてきたことが明らかとなった。