| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-141 (Poster presentation)

小笠原諸島におけるセンダンの遺伝的分化と種苗配布区の設定

*須貝杏子, 鈴木節子(森林総研), 森啓悟, 村上哲明, 加藤英寿(首都大・牧野標本館)

小笠原諸島は、東京から約1,000km南の太平洋上に位置し、これまでに他の陸地と一度も繋がったことのない海洋島である。そのため、独自の進化を遂げた固有種が多く存在し、特異な生態系が形成されている。その生物進化の過程に関して顕著な普遍的価値が認められ、2011年には世界自然遺産に登録された。しかし、同時に外来種の問題が多く指摘されており、ノヤギやクマネズミによる食害、アカギ・モクマオウ・ギンネム等の外来樹の拡大・繁茂など在来植生への影響は深刻である。在来植生の影響は、固有植物が失われるだけでなく、そこで生存する在来動物をも脅かす。外来種駆除後に在来植生を回復させるためには、時として在来樹の植栽が必要な場合がある。その際に、遺伝的攪乱を防ぐためには、事前に植栽対象種の遺伝構造を把握し、種苗配布区を提案することが求められている。

センダンMelia azedarach L.は、アジア・オセアニアの熱帯~暖温帯域にかけて広く分布し、日本では四国以南に生育する落葉性高木である。小笠原諸島では、諸島内全域に生育し、攪乱後の明るい環境において素早い更新がみられるパイオニア種であるため、外来種駆除後の植生回復の効果が期待されている種のひとつである。本研究では、小笠原諸島の13の島から分布域をカバーするようにサンプリングを行い、9遺伝子座のマイクロサテライトマーカーを用いて遺伝解析を行った。その結果、聟島列島、父島列島、母島列島でそれぞれのクラスターが形成された。さらに、各列島内では島が異なっても明瞭な遺伝構造や遺伝的分化はみられなかった。この遺伝解析の結果を踏まえ、小笠原諸島内における種苗の移動に関する提案を行う。


日本生態学会