| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-151 (Poster presentation)
市民、行政、研究者の協働によって多摩川のカワラノギクの保全を行っている多摩川カワラノギクプロジェクトに参加している研究者の立場から報告する。
環境省レッドリストの改定に当たり、カワラノギクは絶滅危惧IB類から絶滅危惧Ⅱ類に変更された。このことは実際に保全活動に関わる者には意外なことであったので、カワラノギクの分布が現在、確認されている鬼怒川水系、多摩川水系、相模川水系においてカワラノギクの個体群を2014年の開花期(10月中旬から11月上旬)に確認し、その位置と開花個体数を記録した。
調査結果は以下のようである。見た目に野生のようにみえても1990年からの観察に基づいて判断すると植栽起源の個体群は植栽個体群として扱った。鬼怒川では、本流に6つの植栽個体群を、支流の大谷川に1つの植栽個体群を確認した。この中には大規模な植生個体群が2つ含まれていた。多摩川では、2つの野生個体群と11の植栽個体群を確認した。植栽個体群の中には大規模な個体群が1つ含まれていた。相模川では、本流に11の植生個体群を、支流の中津川に1つの植栽個体群を確認した。この中には、7つの大規模個体群が含まれていた。
個体群の属性として、堤内地に位置するか堤外地に位置するか、高水敷に位置するか低水路に位置するか、圃場のような管理が行われているか、周囲の自然性、種子食害昆虫ツツミノガの一種の食害を記録した。大部分の個体群は堤外地の高水敷に位置した。堤内地に位置したのは相模川の三川公園、低水護岸に位置したのは鬼怒川の押上地区であった。圃場のような管理が行われていない個体群は、鬼怒川の押上地区、氏家大橋、多摩川の宮ノ下運動場地先、永田地区、京王線下、相模川の寒沢河原であった。周囲の自然性と食害については現在調査中である。
カワラノギクの保全について河川を比較しながら論じたい。