| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-171 (Poster presentation)

野生絶滅種コシガヤホシクサの生育期における個体数減少要因の栽培試験による解明

*堀内 勇寿(筑波大・生命環境),鈴木康平(筑波大・生命環境),永田翔(つくばアクアキャンプ),田中法生(国立科博・筑波実験植物園),上條隆志(筑波大・生命環境)

コシガヤホシクサは野生絶滅種 (EW) に指定される一年生水湿生植物であり,本種の野生復帰を目指した生息域内保全が茨城県下妻市砂沼で2008年から開始されている。一方,現地での自立個体群は依然として形成されていない。一年生草本の本種では自立個体群の形成に繁殖期までの生存個体数が最重要だが,その生存個体数に影響を与える要因には発芽条件(水中・湿地)・光(水深)・水温が挙げられる。現地でこれら要因の評価は困難な為,本研究では各要因が本種の個体数に与える影響を栽培試験によって明らかにし,本種の個体生存に好適な条件を検討する。

栽培試験は筑波実験植物園内圃場において,本種の個体数変化・成長量の調査を発芽試験区(湿地発芽区・水中発芽区(20℃))×水温試験区(水温制御区(20℃-30℃)・水温非制御区)×光試験区(40%・20%・5%)の全12試験区について行った。最初の発芽から30日間は発芽試験区だけで個体数を計測し,その後湿地発芽区を水没させ光試験区・水温試験区の操作を開始した。以降毎週の個体数計測・花序数計測(11月)を行った。実生期(5月)・後期成長量(9月)にサンプリング調査も実施した。

水中期生存個体数・最終生存個体数は水中発芽区,光40%・20%区,水温制御区で多く,対照的に湿地発芽,水温非制御,光5%区では少なかった。面積当たりの花序数も同様の結果であり,個体数が多い程多かった。個体数の多い条件ほど成長量が良好であった為,個体成長が生存個体に正の効果をもたらした可能性がある。個体生存に発芽条件・光(水深)・水温の3条件は重要であり,野生復帰地での保全においても考慮する必要がある。


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