| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-172 (Poster presentation)

神戸市イノシシのロタウイルス感染源としてのリスク評価

*中村幸子, 横山真弓(兵庫県立大学/兵庫県森林動物研究センター),松金知香(兵庫県森林動物研究センター),淺野玄(岐阜大学)

近年神戸市では、市街地に進出するイノシシが大きな問題となっている。ヒト、家畜やペットがイノシシ自体やイノシシの排泄物と接触する機会が増加することにより、様々な感染症が伝播することが懸念される。ロタウイルスは鳥類およびヒトを含めた哺乳類に感染する人獣共通感染症であり、ウシやブタでの罹患率は高い。野生動物についてはタヌキ、シカ、サルおよびイノシシでロタウイルスの抗体が検出されており、イノシシでは、ヒトやブタで流行するタイプのウイルスが感染していた報告がある。

本研究では、神戸市内にて捕獲されたイノシシのロタウイルス感染源としてのリスクを、以下の方法にて確認した。2010年から2013年に神戸市北区および東灘区で有害捕殺された78個体より採取した糞を用いた。糞は分析まで-30度で保存されていた。PBSにより20%糞乳剤を作成し、これよりRNAを抽出し、RT-semi nested PCRにより、目的の領域の遺伝子を増幅した。電気泳動により目的の大きさのバンドが確認されたサンプルについては塩基配列を確認し、ロタウイルスと決定した。今回の検索では、2010年に神戸市東灘区で捕獲された0歳の個体1頭の糞サンプルからロタウイルス遺伝子が検出され(検出率1.3%)、この遺伝子はブタ由来株に近縁であった。今回確認された遺伝子はブタ由来であると推察されたが、イノシシは様々なロタウイルスに感染しやすいという報告があり、またイノシシからヒト由来株に近縁の遺伝子が検出された報告があることから、ヒトとイノシシとの接触の機会が増加することによる新たな感染環を成立させないためにも、イノシシの市街地への侵入防止対策の実施およびイノシシとの接触抑制を呼びかける必要がある。


日本生態学会