| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-174 (Poster presentation)

岩手県の復興工事に伴う砂浜植生保全策-事例報告と提案

島田直明(岩手県立大・総合政策)

東日本大震災によって引き起こされた津波や地盤沈下によって,沿岸域では甚大な被害を受け,海岸部の砂浜植生や防潮林にも多大な影響を与えた。震災から4年が経ち,岩手県内でも防潮堤の工事が急ピッチで進んでいる。しかし,その中で自然環境について議論されることは,ほとんど見られなかった。そこで,島田ほか(2013)などに基づき,岩手県内の関係機関に,それぞれの海岸ごとに復興工事に伴う海浜植生への影響とその保全策について明記したものを送付した。復興工事において影響がでると考えたのは以下の8か所の砂浜,1か所の後背地である.十府ヶ浦(野田村),普代(普代村),小本(岩泉町),沼の浜,津軽石川河口(以上宮古市),船越(山田町),鵜住居川河口(釜石市),大野,小友浦(以上陸前高田市)。そのうち,十府ヶ浦,津軽石川河口,船越,大野の海浜については,工事主体の岩手県と保全対策について協議することができた。

十府ヶ浦では防潮堤かさ上げに伴い,残存している海浜植物群落は消失することになった。協議の結果,海浜植物の移植(表層土の移動),種子や根茎による系外移植と増殖によって,植生復元を行うことになった。防潮堤かさ上げ工事が終わる2017年には,表層土を海浜に戻し,増殖した苗を移植することを予定している。

大野海岸では,南北端にそれぞれ海浜植物群落が確認された。北側の群落は工事によって消失したが,南側の群落は工事対象から外れており,砂浜部分は現状のまま保全されることになった。南側の砂浜に隣接する巨石張工に生育している一部の海浜植物については,移植が検討されている。

津軽石川河口と船越については,十府ヶ浦と同様の対応を要望し,現在県が保全策を検討しているところである。今後も海浜植物群落が保全されるよう注視していきたい。


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