| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-180 (Poster presentation)
徳島県徳島市の沖洲では,高速道路開発のため消失する海浜性甲虫であるルイスハンミョウの生息地の代償として,隣地に人工海浜が造成された.しかし,ルイスハンミョウの確認数が減少し,造成後の地形変化や幼虫が生息可能な面積の減少が確認されており,人工海浜における保全がうまく進んでいるとはいえない.他のルイスハンミョウ生息地での研究から,ルイスハンミョウは①幼虫の生息標高が決まっている,②植生被度が高くなると幼虫が確認されなくなる,③1年間地盤高が安定している面積が大きい場合多くの成虫が出現することが明らかとなってきた.そこで本研究では,人工海浜における幼虫の生息地の標高と植生被度,地盤高の変動の関係を明らかにし,幼虫が生息可能な場を創出することを目的として,人工海浜の幼虫生息環境調査を行った.
標高に対する幼虫の選好度指数を算出すると,0.8~0.95mであった.幼虫が確認できた場の植生被度は25%以下であった.また,幼虫が確認できた場の地盤高の安定性を示す指標とした1年間(6回測定)の地盤高の変動係数は2.3~8.5%であった.地盤高の変動係数は波当たりなどの物理的要因に大きく左右され,管理することは難しい.一方,植生は除去することで被度を低くすることができ,幼虫の生息場の面積を確保できるとともに,人為的に管理することができる.そこで,海浜全体の地盤高の変動係数と植生被度および標高を測定し,今回明らかになった幼虫の生息場の条件を照らし合わせ,人工海浜における幼虫の生息場を創出しやすい場所を抽出した.今後は,植生の回復スピードを測定し,植生を除去する期間を推定することから,幼虫の生息場の維持管理につなげたい.