| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-181 (Poster presentation)

海洋島の外来樹駆除が土壌含水量に及ぼす影響:乾燥時の減少と降雨時の増加の程度の変化

*畑 憲治(首都大院・理工・生命),川上和人(森林総研・野生動物),可知直毅(首都大院・理工・生命)

海洋島の森林生態系で優占する外来樹木の駆除は、その生態系における水の収支や循環を変化させる可能性がある。本発表では、小笠原諸島の森林で広く分布する侵略的外来木本種トクサバモクマオウの駆除が、生態系内の水の循環に及ぼす影響を評価する。そのために、実験的な同種の駆除が乾燥時と降雨時における土壌含水量の時間的変化に及ぼす影響を定量化した。

実験は、小笠原諸島の西島のトクサバモクマオウが優占する森林で実施した。5地点で10×20 mのコドラートを設置し、各コドラートを2つのサブコドラート(10×10 m)に分割した。各サブコドラートに土壌水分センサーを設置し、表層土壌の体積含水率を約15か月間測定した。測定開始から1か月後に一方のサブコドラート(以下駆除区、もう一方を対照区)内の全トクサバモクマオウ個体を除草剤によって枯殺した。調査地の降雨量は父島の測候所の降雨量データを用いた。

トクサバモクマオウの駆除処理後、駆除区の表層の土壌含水量は対照区よりも有意に高かった。乾燥イベント時(1日の降雨量が10 mm以下の連続した期間)におけるその土壌含水量の減少の程度は、駆除区において対照区よりも有意に小さかった。一方で、駆除処理の有無による降雨イベント時(1時間あたり0.5 mm以上の降雨が連続してあった期間)の土壌含水量の増加の程度の違いは、そのときの降雨量に依存した。

以上の結果は、トクサバモクマオウの駆除に伴う土壌含水量の増加は、乾燥に伴う土壌からの水の消失の緩和と関係していることを示唆した。また、この土壌含水量の増加が駆除に伴う降雨時の土壌への水の供給の増加によって説明できるかどうかは、そのときの降雨量に依存することを示唆した。


日本生態学会