| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-184 (Poster presentation)

水資源管理のためのソフト・パス:水利転用制度の適用可能性

*柿沼薫, 吉川沙耶花 (東工大・理工), 遠藤崇浩(大阪府大・人文), 鼎信次郎(東工大・理工)

人口増加や気候変動による水逼迫が懸念されており、持続的な水資源管理は国際的な課題である。これまで、水逼迫への対策として、貯水池建設による新たな水資源の確保といったハード・パスがとられてきた。一方でハード・パスによる対策は、生態系への影響が大きい等問題があることから、既存のインフラを利用し、水資源管理の制度を整備するといったソフト・パスを活用する機運が高まっている。    

水利転用制度とは、セクター(農業・工業・生活・環境用水)間またはセクター内で水の配分を変えるための制度である。相対的に水が豊富な主体から相対的に乏しい主体へ再配分を促す点で、水逼迫の対策として期待されている。これまでの水利転用制度に関する研究は、地域スケールで取り組まれることが多かった。しかしながら、世界の水資源問題と結びつけるためには、全球スケールの視点で水利転用制度の適用可能性を検討する必要がある。そこで本研究では、文献をもとに事例調査を実施し、水利転用制度成立に関わる要因や仕組みを解明した上で、世界197の国と地域の水法を調査し、全球スケールで制度の適用可能性を可視化した。

事例調査の結果、制度成立の前提として、水利転用の許可制度が導入されていること、そして土地所有権と水利権が分離していることが挙げられた。この法整備の状況を、世界地図で表した結果、水逼迫が懸念される地域で、今回の前提を満たす国(パキスタンなど)とそうでない国(サウジアラビアなど)があることが分かった。制度導入へ向けては、社会的慣習や自然環境なども考慮する必要がある。課題はあるが、本研究により、世界の水逼迫への対策としてハード・パスだけでなく、ソフト・パスを検討する枠組みを初めて提示することができた。


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