| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-194 (Poster presentation)

クズの優占した耕作放棄試験地における高・低木種の侵入

池田浩明((独)農環研)

わが国では、1980年代以降、耕作放棄地が増大している。この耕作放棄地にクズ(木本性つる植物)やササ類が侵入すると、高木林への自然遷移が妨げられ、停滞することが報告されている。このような偏向遷移系列における木本種の侵入・定着を明らかにすることは、耕作放棄地に自然林を再生する保全活動にとって有益な知見となる。そこで、同一圃場で長期的に耕作放棄試験を行い、クズ優占群落に侵入した高・低木種を調査した結果を報告する。

茨城県つくば市農業環境技術研究所内の圃場(20 m×30 m;前作は大麦)を1995年5月18日に耕起し、耕作放棄した。0.5 m×0.5 mの方形区(10区)を設置し、毎年5月、11月に植生調査を行った。また、2013年5月から高・低木種のパッチを含む場所に同サイズの方形区(10区)を新設し、同様な調査を実施した。

耕作放棄後の優占種は、放棄1年目でオオイヌタデ・ブタクサ・メヒシバ、2年目でアレチマツヨイグサ・ブタクサ、3年目でアレチマツヨイグサ・ツルマメと変化したが、4-7年目はセイタカアワダチソウが、7年目以降はクズが安定して優占した。植物の出現種数は放棄年数とともに減少したが、放棄12年目以降は少ない種数で安定した。他の木本種としては、イボタノキ、コウゾ、マユミ、スイカズラが侵入して徐々に被度を増大させた。一方、ヌルデ、アカマツ、コナラ等は、実生が出現したものの定着しなかった。

高・低木侵入区と未侵入区(クズ優占区)のセイタカアワダチソウ個体数を比較した結果、5月の個体数では有意差が見られなかったが、11月の個体数では高・低木の侵入による有意な減少が検出された。これらの結果は、クズ優占群落が高・低木林へと自然遷移するものの、そのプロセスはよく知られた通常の遷移系列と大きく異なることを示唆している。


日本生態学会