| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-201 (Poster presentation)
通常リンゴを無農薬で栽培すると,リンゴは病気や害虫の被害を受けて,収穫は皆無になる。しかし,「奇跡のリンゴ」で知られる木村秋則氏のリンゴ園は,農薬(食酢を除く)や肥料(有機肥料を含む)を一切使わなくても,全国平均のリンゴを収穫している。しかし,同じように無農薬のリンゴ栽培を試みた他のリンゴ園は,病虫害の大きな被害を受け,必ずしも栽培に成功しているわけではない。そこで,園地での生物多様性の増加と生物間の相互作用ネットワークの発達が病原菌や害虫の増殖を抑え,無農薬でのリンゴ栽培の成功を可能にするという仮説を提示した(「すごい畑のすごい土」,幻冬舎新書)。この仮説を実証するために,木村氏リンゴ園に隣接した園地で,無農薬のリンゴ栽培を試みた。もし,無農薬リンゴ栽培の成功が,病原菌や害虫の増殖を抑制する生物間相互作用に依存するなら,隣接した園地には木村園に生息する生物(内生菌,寄生蜂)が移動することで,短期間で相互作用ネットワークが発達し,病害虫の被害を抑制できるはずである。試験結果は,栽培1年目にもかかわらず,病気や害虫の被害をある程度抑えることに成功できた。また,リンゴ葉の内生菌量や寄生蜂の密度も木村園に近くなり,園地の生物群集内に発達する生物間相互作用がリンゴ園の病虫害の被害を抑制するという仮説はある程度支持された。