| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-202 (Poster presentation)

モンゴル草原に生育する低嗜好性雑草Artemisia adamsiiの拡大能力と防除の可能性

*石橋京子(鳥取大・農),衣笠利彦(鳥取大・農)

Artemisia adamsiiはキク科の多年生草本で、撹乱地に侵入し急速に拡大する。モンゴル草原では近年過放牧などの人為的撹乱の増大にともない、A. adamsiiの群落が拡大している。A. adamsiiは家畜の嗜好性が低く、その拡大は草原の牧草地としての価値を低下させる。草原の牧草地としての質を維持するには、A. adamsiiの拡大能力を把握しその拡大を制御する必要がある。そこで、A. adamsiiの種子繁殖能力と地下茎成長能力を調べ、防除の可能性を検討した。

モンゴル草原に生育するA. adamsiiの種子生産量を調べ、制御環境下で種子発芽能力を評価した。A. adamsiiを栽培し、地下茎成長能力と地上部切除処理に対する応答を調べた。

A. adamsiiは、微細な種子を群落1m2当たり約16万粒生産していた。発芽には温度依存性と光要求性があり、赤色光照射下における発芽の最適温度は約18℃で発芽率は70%程度であった。この最適温度は現地の6月と8月の日平均気温に相当した。A. adamsiiは約1年間の栽培で、1個体あたり約48本のラメットを生産し、拡大面積は約1500cm2、最大拡大幅は大きい個体で94cmであった。地上部切除処理後約2カ月で、地上部バイオマスは無処理区の約90%、ラメット数は約80%、個体の拡大面積は約60%にまで回復した。

以上から、A. adamsiiは高い種子繁殖能力を持ち、地上部刈取り後は急速に再成長することが分かった。したがって、夏から秋にかけて大量の種子が生産される前に繰り返し地上部を刈取ることで、拡大をある程度抑制できると考えられる。ただし発芽に光要求性があるため、地上部の刈取りによって群落内の休眠種子が発芽しないよう被覆処理も同時に行う必要があるだろう。


日本生態学会