| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-203 (Poster presentation)

野外温暖化実験による温度上昇がコナラ根系の動態に与える影響

*新銀 仁善(鳥取大・院・農) 佐野 淳之(鳥取大・農・森林生態系管理)

地球温暖化にともない、温度上昇に対する樹木の応答を明らかにする研究が求められている。しかし、その多くは樹木の地上部を対象としたものであり、地下部を対象としたものは少ない。根は主に土壌中の養水分の吸収機能、地上部の器官全体の支持機能、物質貯蔵機能をもっており、樹木の生育において重要な器官といえる。したがって温度上昇に対する樹木の影響を考える上で、地下部を対象とすることは重要である。そこで本研究では温暖化操作実験による温度上昇が根系の動態に与える影響を明らかにすることを目的とした。

鳥取大学FSC教育研究林「蒜山の森」にあるコナラ二次林内のギャップ下に自生していたコナラ実生約10個体に対し、温暖化装置Open Top Chamber(以下OTC と記述)を1基ずつ、3反復設置した。根系の動態を観察するためにアクリル製の根箱を製作し、1箱につきコナラ実生を側面に対して1個体ずつ、中央に1個体の計5個体を植栽した。根箱4箱を1セットとし、ギャップ下と閉鎖林冠下にそれぞれ6セット埋設した。ギャップ下の6セットのうち3セットにそれぞれOTCを1基ずつ設置した。成長が終わる秋にOTCと根箱内の全実生と、OTCと根箱周辺に自生していた実生をそれぞれ約10個体ずつ採取し、根径と根長を測定した。また、OTCの内外で気温と地温を測定した。

上層環境によらず、根箱内の実生は、根箱外と比べて根長に違いはみられなかったが、根径は有意に大きかった。このことから根箱によって根系の発達が促進されることが示唆された。OTC内の実生は、OTC外と比べて根径に差はみられなかったが、根長は有意に大きかった。また、気温は季節を通してOTC内の方が高かった。このことから温度の上昇によって地上部よりも地下部に資源を投資していることが示唆された。


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