| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-204 (Poster presentation)
鈴鹿山脈においてもニホンジカの密度が増え植生が影響を受けている。最高峰の御池岳(1247m)周辺で2013年に調査を行い、現状を明らかにするとともに過去の情報と比較してその変化を推定した。滋賀・三重県境にある鞍掛峠から御池岳山頂を通り奥の平までの登山道沿い(延長1700m)で、50mを1区画としたベルトトランセクトを設定し、道の左右2mの範囲に出現した植物の種名、食痕の有無を記録した。別に方形枠を設置し、出現種の被度、食痕の有無を記録した。稜線部に繁茂していたイブキザサ群落は、2007年以降の数年でササが枯死しイワヒメワラビを主とする群落に変化していた。山腹のリョウブ・シロモジ林と山頂部のオオイタヤメイゲツ林では、樹皮はぎを受けている幹がみられ、一部は枯死したり倒れていた。ベルトトランセクトの34区画に計138種が出現し、1区画の出現種数の最大は46種、最少が15種であった。リョウブ、オオイタヤメイゲツ、カンスゲ、ミヤマカタバミなど15種が17区画以上で出現した。一方、3地点以下で確認されたものが50種あった。そのうちハナヒリノキやヒカゲノカズラは、シカが好まないため局所的に高密度で群落を形成していた。草本と低木の多くの種では、小型化し花をつけるに至らない株が多かった。出現した植物へのシカの摂食は24区画の20種でみられ、1区画での最大は6種だった。カンスゲが19地点と最多で次にリョウブが11地点だった。高木種の幼木・若木は非常に少なく実生は当年生のみ出現した。表土が流出している場所も多くみられた。2007年にキクザキイチゲが開花していた地点では、開花株はなく被度が減少していた。植被率も35%から19%へ低下していた。これらを元に希少種の生育環境を検討するとともに、保全と回復の優先順位を考えて対策を行う必要がある。