| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
企画集会 T01-3 (Lecture in Symposium/Workshop)
モニタリングサイト1000里地調査は、急激に変化する里地里山の自然環境をモニタリングすることを目的として、日本自然保護協会が2004年より事務局を担いスタートした。2008年には全国の市民団体に呼びかけ、現在までに約200ヵ所もの調査サイトで調査が開始され、調査参加者数は2500名以上となった。
2012年までの5年間の全国調査の成果をとりまとめた結果、植物相、鳥類、チョウ類の種数などの生物多様性指標の全国的な減少が認められた。さらに、ノウサギやテン、ゲンジボタルの個体数についても全国的な減少傾向が確認された。一方で、アライグマやガビチョウなどの外来種の種数の増加や分布の拡大を確認することができた。
生物多様性の全国的な変化傾向を正確に捉えるにはさらなる調査が必要であるものの、こうした評価を可能とした全国規模での里地里山の生物多様性観測ネットワークを構築できたことは、これまでの本事業での最も大きな成果である。また、各地では里地調査をきっかけとして、市民団体による自主的な調査結果の活用が進んでいる。例えば、福井県のラムサール条約湿地「中池見湿地」での保全計画へのデータ活用や、大分県内の行政を交えた調査サイト合同成果発表会、千葉県流山市における生物多様性地域戦略への活用などである。
今後は、こうした観測ネットワークの持続的な体制構築が最大の課題となる。そのため演者らは、新規調査員獲得のための体験講習会の実施や、ニュースレター等を通じた地域の優良事例の積極的な発信・共有を行っている。また、地域の博物館等と協力して調査技術のフォローアップ研修会の実施や成果発表の場を創出することで、地域ごとの市民と専門家による持続的な協力体制の構築を進めている。