| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
企画集会 T04-2 (Lecture in Symposium/Workshop)
無脊椎動物,特に昆虫類に普遍的に感染する細胞内共生細菌Wolbachiaは,ホストに対して多様な繁殖操作を示すことで知られる。また,野外における昆虫類のWolbachia感染率や性比異常なども様々な昆虫類で報告されている。一方で,多様な昆虫類に感染し繁殖操作を行うにもかかわらず,Wolbachia感染率の集団内での変動はこれまで全く調べられてこなかった。そこで,本研究ではWolbachiaに感染しているが,生態がまだよくわかっていない同所的に生息する在来ダンゴムシ2種の生態の一端を解明することと,Wolbachia感染率の季節変動,そしてWolbachiaによる繁殖操作の有無を観察することを目的とした。材料として岡山市半田山に生息するコシビロダンゴムシ科2種(Spherillo dorsalis, Spherillo sp. shi-1)を対象に、4月から11月までのWolbachia感染率の変化と,発生消長,性比を定点記録した。
その結果,2種のコシビロダンゴムシは異なるWolbachiaに感染していることがわかった。また,月間で2種の個体群内のWolbachia感染率は変化せず,明確な発生ピークも観察出来なかった。しかしながら,Wolbachia感染率は2種間で異なっており,性比はメスバイアスであった。S. dorsalisでは73%(158/216)の個体がWolbachiaに感染し,メスが80%(156/195),オスが10%(2/21)と有意にメスが感染していた。一方で,S. sp. shi-1は96%(435/452)の個体がWolbachiaに感染しており,雌雄間で感染率に有意差はなかった。