| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
企画集会 T04-4 (Lecture in Symposium/Workshop)
ワラジムシ亜目は,陸上に進出した等脚目の種より構成され,日本では100種以上の種が報告されている.落葉粉砕者としてヤスデ等と並ぶ重要な生態的機能を有する動物群である.またオカダンゴムシ等の外来種も存在し,その種数の増加,分布域の拡大が進行しつつある.ワラジムシ亜目は,その形態から1)堅いクチクラをもち刺激により身体を丸める種,2)やや堅いクチクラをもつが身体を丸めない種,3)堅いクチクラを持たず素早い動きが可能な種の3つに大別できる.これまでに堅いクチクラによる物理的防御と忌避物質によるワラジムシ亜目のアリに対する捕食回避が報告されているが,捕食者に対する本亜目の形態学的,行動学的特性の効果についての知見は断片的なものでしかなく,更なる研究が求められている.そこでカスミサンショウウオとトビズムカデのワラジムシ亜目の種に対する餌選択性について,外来種も含めた試験を行った.その結果,カスミサンショウウオは1)〜3)の在来種は同様に摂食したが,大型の外来種,オカダンゴムシやクマワラジムシの成体は捕らえても摂食できず,最終的には摂食を放棄することが明らかとなった.トビズムカデでは外来種,在来種に関わらず堅いクチクラを持たない種を好んで摂食し,堅いクチクラを持つ種に対しては捕食行動すら示さなかった.以上より,堅いクチクラによる物理的防御,外来種で見られる大型化は,捕食者の攻撃から身を守る有効な手段となっていることが示された.今後,在来種が強大な外来種に置き換わることで「食えないワラジムシ亜目の種」が増加し,餌資源の変更を強いられる在来動物が生じる可能性がある.