| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
企画集会 T05-1 (Lecture in Symposium/Workshop)
動物が群れになって動く様子はおもしろく、たくさんの人が魅了されてきた。とくに、個体それぞれが美しく調和のとれた動きをすることで群れを作り出し、ときには、進行方向を劇的に変えながらも、その群れのかたちを維持し続けることは非常に興味深い行動である。
群れ行動は、バクテリアの集合、イナゴやアリの行列、魚や鳥の群れ、歩行者の列といったもので、私たちの前に表れている(Vicsek & Zafeiris, 2012)。これらの行動は従来、観察実験よりもシミュレーションによって多くが調べられ、モデルが作られてきた(Sumpter, 2010)。その発端となったものがReynolds (1987)のボイド(Bird-oid)である。ボイドは、鳥の群れを模したシミュレーションプログラムで、コンピュータ・グラフィックスの分野で発表された。この発展型が現在の映画や映像演出にも用いられている。ボイドの個体は、「整列」・「引き寄せ」・「回避」という規則を持ち、他の個体と相互作用しながら群れを作り出すことができる。
ボイドの三つの規則を基にした群れのシミュレーションから、それぞれの規則の強さを変えることによって、水族館の展示で見られるイワシの群れのような回転するふるまい(回転型)や、鳥が見せるような群れが一定の方向を向き動き回るふるまい(行進型)を作り出せる。このような規則の強さによって表れる群れのパターンを示す相図を作ることは、モデルを詳細に調べるという意味だけでなく、実際の動物を用いた観察・実験からデータを得て、それを解析する際にも基礎となる事柄である。
本講演では、本集会の概要と群れ行動の実験やシミュレーションモデルの連なりを紹介し、その導入とする。また、簡単な幾何計算によって、群れモデルのパターンを示す相図をより詳しく作り上げていく過程を説明する。