| 要旨トップ | ESJ62 企画集会 一覧 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
企画集会 T05 -- 3月20日 9:00-11:00 F会場
アリやハチなどの昆虫や、マイワシなどの魚類、ホシムクドリなどの鳥類といった多くの動物が、それぞれに特徴的な動きや形の群れ行動を示す。各個体は、群れ全体の動きや形を把握せずとも、視覚や聴覚などを使って、近隣にいる他個体を認識し、自己の動きを決めている。このような小さな範囲での反応が集まり、全体として秩序ある群れが形づくられる。
動物の群れ行動は従来、主として数理モデルを用いて調べられてきた。これらは群れの振る舞いを現実に似せることはできていたが、定められた行動プロセスが実際の群れにおいて見られるかという点は検証が難しく、近年までほとんどされてこなかった。現在では、映像機器やGPS計測機、加速度センサーなどの性能向上に伴い、画像解析や各個体に取り付けたロギング機器によって群れ行動を計測し、得られたデータから行動プロセスが検証され始めている。
群れ行動は、個体の簡単な反応から群れ全体の秩序が創発する典型的状況として、行動生態学・進化生態学における興味深い研究課題である。群れが表す秩序は、様々な違いを持つ個体が集まり全体としての合意を作り出す明確な例である。群れ行動を示すのは、社会性昆虫、魚類や鳥類だけではなく、人間においても見られ、それは集団の合意形成という形で社会の様々な場面に表れる。よって逆を辿れば、人間社会の合意形成の法則性を探り出すカギは動物の群れ行動にある、と言えるかもしれない。
本企画集会では、数理モデルやシミュレーション、実測データの解析、社会心理学の視点によるヒトの集団行動に至るまでの、群れ行動研究の全体を見渡せる場を提供し、今後の研究発展への新しいアイデアを議論したい。
[T05-1] ボイドの規則を用いた群れモデルと幾何学的アプローチによる相図の作成
[T05-2] 鳥の群れの構造とダイナミクス
[T05-3] 個性的なカニ達がつくる群れ
[T05-4] 内部ゆらぎによって駆動される群れの運動能:アライメントルールによらない定向性の創発
[T05-5] 実験的・理論的見地からみる評価・解釈の二重性を伴う群れ
[T05-6] 情報化社会におけるヒトの集団意思決定:集合知?それとも、集合愚?