| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
企画集会 T05-2 (Lecture in Symposium/Workshop)
ツルやマガンなどの比較的大型の渡り鳥が形作るV字編隊飛行やムクドリの"murmuration" のように、飛行する鳥の群れは様々な形態をとる。これらは「なぜ」そして「どのように」形成されているのだろうか。最近の測定機器の小型・高性能化によって,多様な手段での実際の生物集団の挙動の観測が可能となったこともあり、これらの集団行動の時空間的な構造をとらえ、数理的な観点から解析する研究が盛んになってきた。観測手段は、カメラ等を用いて離れた場所からデータを取得するリモートセンシング型と加速度センサーやGPS等の小型機器を個体に装着してログを取るバイオロギング型に大別できるだろう。鳥の群れの動態を対象とした実測データに基づいた研究では、前者の例として Ballerini らによるムクドリの群れについてのものや、早川によるマガンのV字編隊に関する研究が挙げられる。いずれもステレオカメラを用いたもので、数十〜百m程度離れた個体の位置を3次元的に再構成することが可能であり、群れの構造を特徴づけている。一方、後者すなわちバイオロギングについては、例えば Nagy らによるハトの群れについてのものが挙げられる。GPSを装着させた伝書鳩の群れの軌道を追跡することで、方向選択に関する先行追尾関係を定量化し、群れの中に階層構造があることが報告された。いずれの研究も飛行する個体間の相互作用がどのような性質をもつかということまで踏み込んでいる。
本講演ではこれら一連の研究を紹介し、時間があればステレオカメラを用いたユリカモメの群れの動態に関する具体的な解析結果についてもふれたい。