| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


企画集会 T10-5 (Lecture in Symposium/Workshop)

何が生態系サービスの利用を左右するのか?マレーシア・サラワク州での大規模聞き取り調査から

*酒井章子(京大生態研),Choy Yee Keong(京大経済),小泉都(京大農),岸本圭子 (東大広域),高野(竹中)宏平(東北大生命),市川昌広(高知大・農),鮫島弘光(京大東南研),加藤裕美(京大白眉),祖田亮次(大阪市大文),潮雅之(龍谷大理工),西前出(京大環境),中静透(東北大生命),市岡孝朗(京大人環)

非木材林産物は、森林の重要な生態系サービスだが、その利用は世界のいろいろな地域で減少傾向にある。森林の減少や劣化がその潜在的要因の一つだが、貨幣経済の拡大など社会・経済的要因も深く関連していると考えられる。森林の減少・劣化が住民に与える影響を評価するためには、定量的なデータを用いて、生態的要因と社会的要因を同時に検討する必要がある。

本研究では、マレーシア・サラワク州における住民の林産物利用の有無や頻度のばらつきがどのような要因で説明できるのかを検討した。バラム川・ラジャン川流域の 89 村において各村 16-20 世帯の林産物利用などを調べたほか、村長から村の社会的環境や状況についての情報を得た。周辺の森林の状況については、衛星データに基づく土地被覆図から森林の割合を算出した。

分析の結果、森林が減少すると利用が減ることが、いくつかの林産物で示された。また、経済的要因も重要だったが、その影響は林産物の種類によって異なった。例えば、 豊かな世帯では狩猟動物、野生果実の利用は増えるが、薪の利用は減る。このような違いは、住民にとっての林産物の価値と関連していると考えられる。

この研究により、林産物利用に、社会的・生態的要因双方が影響を与えていることがデータから明らかになった。このように、生態系の改変や劣化が住民に与える影響を評価するには、異分野での共同研究が必要である。その試みは、まだ始まったばかりである。


日本生態学会