| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
企画集会 T11-2 (Lecture in Symposium/Workshop)
高木や老木は幹や枝の成長にともない空間的に多様な環境を生み出し、様々な生物へのハビタット提供や、林分の生産性増加などに寄与している。また、日本では神社の御神木といった文化的価値としての高木・老木の存在も大きい。しかし、ヒトに比べてはるかに大きく長寿であるがゆえ、高木や老木の生態については未解明な部分も多い。
現存する世界一高い樹木、北米カリフォルニア沿岸部に生育するセコイアメスギ(Sequoia sempervirens)では、長年にわたって木登り調査による生理生態学的研究が進められている。100m以上の高さの木に登り調査することは、技術面における工夫や危機管理、根気や体力が必要だが、地上から見上げているだけだった高所の枝葉を、直接、同じ位置で、間近に目にすることができる感動はとても大きい。木登り調査と地道な実験を組み合わせることで、なぜセコイアメスギがここまで高くなれるのか?に対する答えのひとつが生理学的視点から明らかとなった。
日本の秋田県田代沢国有林には、樹高50m以上の日本最大級のスギ(Cryptomeria japonica)が生育している。マクロな生理学的手法に加えて、野外で起きている生理現象をその場で検証することにこだわり、液体窒素を樹上に持ってあがり葉を急速凍結させ、葉のミクロ構造を観察した。また、植物体内の水の物理化学性を可視化するなど、これまで樹木生理学にはなかったミクロな生理学的測定を試みた。
本講演では、実際に木に登ることで体感する現場でのインスピレーションと実験室での地道な作業を融合することのおもしろさを紹介したい。