| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


企画集会 T11-3 (Lecture in Symposium/Workshop)

コナラ属における堅果生産と樹冠成長のトレードオフ

星野航(岡山大・農), 赤路康朗, *宮崎祐子(岡山大・環境生命)

ブナ科コナラ属(Quercus)の堅果生産量は年変動することが知られている。また、堅果の着生は周囲の枝の成長を抑制し、樹木個体の空間獲得に影響を及ぼすことが考えられる。そこで本研究では、コナラ属において樹冠上部の枝内における堅果生産と樹冠成長のトレードオフの関係を木登りによって経時的に直接観察・サンプリングすることによって明らかにし、コナラ属の樹冠成長量に堅果生産量の年変動とリンクした年変動がみられるかどうかについて検討した。

調査は岡山大学半田山自然教育研究林および岡山市半田山植物園に生育するコナラ(落葉・一年成:開花と同年に堅果が成熟する)、アラカシ(常緑・一年成)、アベマキ(落葉・二年成:開花の翌年に堅果が成熟する)、アカガシ(常緑・二年成)各3個体を対象とした。雌花の着生位置を把握するため、開花から2カ月間、3週間に一度の頻度で調査個体にロープを用いて登攀し、樹冠上部から枝を採取した。採取した枝は年枝毎に全ての雌花数と枝の位置を記録し、バイオマスを測定した。解析の結果、前年に上方の空間獲得を担った一年枝は翌年に発生させる当年枝上での堅果生産を抑え、当年枝の伸長成長を優先させていると考えられた。また、上方の空間獲得を担う当年枝上に雌花数が多い傾向がみられた。これらのことから、上方の空間獲得を担う当年枝が資源をより多く用いることにより、上方の空間獲得と堅果生産を両立させていると考えられた。以上の結果から、本研究で用いたコナラ属では、堅果生産と成長の間に枝の発生位置が関与する資源利用に関するトレードオフの関係が認められることが示唆された。


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