| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
企画集会 T11-4 (Lecture in Symposium/Workshop)
本講演では、木登りの末にたどり着く樹上の世界で生きる着生植物について、その研究事例を紹介する。着生植物に関しては、林冠への安全なアクセス手段が確立されてから研究が大きく進展し、これまでに熱帯林内での森林生態系や生物多様性への貢献が明らかとなっている。しかしながら、地球規模の気候変動の影響などにより生物多様性保全の緊急性がより増している現在、特に情報の不足している熱帯アジア地域において着生植物の生態解明が必要とされている。
タイ王国北部に位置するドイインタノン国立公園内の熱帯山地林において行われている研究の一つに、着生植物の形質的特徴とハビタット連関性を調査したものがある。熱帯林内の低木から林冠木、超出木におよぶ階層構造は、光強度や水環境などの異なる多様なハビタットを提供しており、着生植物はそれらのハビタットに応じた形質を獲得して適応していると考えられる。着生植物を形質的特徴に基づいて分類した機能群 が示すハビタット連関性を明らかにすることを試みた。一部の機能群はあらゆるハビタットを利用可能なものの、多くの機能群が樹上の特定のハビタットに強く依存していることが明らかになった。
また、同調査地の着生シダについて形質ごとの資源利用の違いを明らかにする研究が進行中である。調査地内に確認されている着生シダには、落葉性で根茎が横走するタイプと常緑性で根茎が横走しないタイプが存在するが、タイプ間で形態と資源利用戦略が大きく異なると考えられる。そこで各タイプの着生シダについて形態と各器官への資源配分率 を比較することで形質と資源利用の関係性を考察する。