| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
企画集会 T11-5 (Lecture in Symposium/Workshop)
ボルネオ島のマレーシア領サラワク州のランビルヒルズ国立公園は、フタバガキ科の樹種が優占する典型的な低地熱帯雨林で覆われている。フタバガキ科は、地上40〜50mにも達する非常に背の高い林冠を構成するが、その樹冠部には多様な着生植物が見られる。
着生植物の基部や器官内の空隙は、しばしば樹上性のアリ類が営巣場所として占めるが、フタバガキ科サラノキ属の樹冠によく見られるウラボシ科の着生シダは、ある1種のシリアゲアリによってほぼ独占利用されている。このシリアゲアリは恐ろしく攻撃的で活動性が高く、営巣する着生シダだけでなく、着生基質である林冠木にすら明瞭な被食防衛効果があらわれるほどである。また、多種昆虫を攻撃・排除するため、樹冠部の異種アリやシロアリ群集の多様性を減らすほどである。
生物多様性で混み合う熱帯雨林の林冠という生息場において、この着生シダとシリアゲアリのコンビネーションはこれらの種だけによる画一化を果たしているようにも見える。
しかしわざわざ木に登って身体中を噛まれながら、このアリの巣である着生シダの内部をよく見ると、そこには実に多様なゲスト昆虫たちが登場する。さらにその中には尋常ではない量のゴキブリが発見され、いったいこれらがどんな生活をしており、着生シダーアリの共生系においてどんな役割を演じているのか、たいへんそそられる疑問をもたらしてくれる。そこで少しずつ分かってきたことと、実際に木に登る作業の苦難などを紹介する。